ワンルームの片隅にて

テレビではワールドカップが盛り上がっている。テレビの中で活躍する彼らはいつ、何がきっかけでサッカー選手になろうと思ったのだろうか。

 

風呂上がり、だらしない格好でテレビを眺める僕は疑問に思う。自慢ではないけれど、僕は生まれてこのかた何かになりたいと思ったことがなければ、何かを目指したこともない。ただ流されるままに小中高大と進み、気がついたら社会人になっていた。人より少し良い大学に入り、誰でも一度は聞いたとこのある会社に入り、世間的にはそれなりの人生を歩んでいるのかもしれない。でも、テレビで活躍する彼らを見るといつも思う。

 

自分の仕事は人に何か与えているだろうか。誰かの一日を少しでも変えただろうか。そして、自分は何か一つでも自分で選んだ道を進んで来ただろうか。

 

テレビで活躍する彼らの大体が年下となってしまった今、その自覚は強くなる一方だ。彼からがこの数時間で与えた感動を、僕は二十数年という歳月をかけても誰かに与えることができなかった。

 

人の命に重さはないとか、職業に貴賤はないとかいうけれど、間違いなく僕のそれは軽い。吹いたら飛んで行きそうなこの僕の命は、いつまでこの世界にしがみついていられるのだろうか。

 

お祭り騒ぎの画面を消すと、そこは薄汚れたいつものワンルーム。さあ、そろそろ電気を消して眠りにつこう。明日もまた、生きていかなくてはならないのだから。